帰還兵

わたしが小学生の頃には戦争から生還された先生が結構いました。
どの先生も戦争の話はしたがりませんが、たまに戦争中の話をしてくれる先生もいました。
もっともどの先生も敵を殺した等の血なまぐさい、戦争の本質的な話は一切しません。

A先生は南方戦線に従事し、マラリアに罹ったそうです。
生死の境をさ迷ったそうですが、キニーネのおかげで助かったそうです。
小学校低学年で初めて聞いた「キニーネ」をいまだに覚えています。

中学校でも生還された先生がいました。
T先生は満州戦線に従事しました。
トーチカでソ連の侵入を見張ります。
寒いので石炭ストーブを炊きますが、ストーブの煙を出すと敵意発見されるためトーチカの中は常に煙が充満しており、目が真っ赤になったそうです。

どの先生も命からがら帰還されており、その話には真実味があります。
いつも、ドキドキハラハラしながら聞いておりました。
多分、わたしが真剣そのもので聞いていたんでしょうね。(授業中より何倍も)
ある時、A先生から話の途中で「こんな時、君ならどうする」とわたしを指さし尋ねられました。
ブルブルと震えながら「どうにもできません」と答えた覚えがあります。
こういう実体験に基づく話を聞けば戦争なんて絶対に御免だと思うようになります。
こういった語り部がいないと安易に戦争に走っても仕方ないかなと思うような人が増えてくるのではと懸念しております。